本記事では数ある小説で、ミステリー、どんでん返し、ホラー、ファンタジー、青春、恋愛、家族、感動、医療、社会派、純文学、歴史・時代、映像化作品の中から2025年版『面白いおすすめ小説ランキング』をジャンル別にてご紹介します。
まだ、読まれていない本があれば、これを機に読んでみてはいかがでしょうか。
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【いま話題】面白いおすすめ小説
『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈
あらすじ
中2の夏休みの始まりに、成瀬あかりは閉店を控えた西武大津店に毎日通い、テレビ中継に映ると幼馴染の島崎に宣言したのだが…。
さらに、M-1グランプリに挑戦したり、突然坊主にしたりと予想もつかない行動を続けるあかり。そんな彼女から目を離すことができない青春ストーリー。
おすすめポイント
いつも唐突に、思いもよらない行動をする成瀬あかり。閉店まぎわのデパートに毎日通ったり、M-1グランプリに挑戦したりと、突拍子もないことにチャレンジする成瀬。
周りの目を気にすることなく、清々しいほどに我が道を突き進んでいく彼女の姿は、微笑ましくも、眩しくもある。独自の世界観でマイペースに生きる少女に、青春のきらめきを感じてしまう作品。
『黄色い家』川上未映子
あらすじ
惣菜店で働いている花は、ネットで偶然目にしたある記事。それはかつて一緒に暮らした吉川黄美子が、監禁・傷害の罪に問われているというニュースだった。
長らく忘れていた20年前の記憶。黄美子と2人の少女たちと一緒に擬似家族のように暮らし、生きていくために罪を重ねていくのだが…。
おすすめポイント
貧しい家庭に生まれた花は、なんとか貧困から抜け出そうと必死にもがいていく。普通の幸せを手にしようと奔走するが、やがて犯罪に手を染めることに。
社会からはじき出され、負の連鎖から抜け出せない者たちの苦しさと、生きていくことの難しさを考えさせられる。持たざる者が生きていくには厳しすぎる現代において、懸命に駆け抜けた少女たちの姿から幸せのあり方を問いかけられる作品。
『レーエンデ国物語』多崎礼
あらすじ
しがらみから逃れるため、貴族の娘ユリアは英雄の父とともに旅にでる。呪われた土地と呼ばれるレーエンデで出会ったのは、寡黙な弓の名手トリスタンだった。
泡虫の群れが空を舞い、乳白色に天へ伸びる古代樹など、異界のような美しさに魅了されたユリアは、はじめての友達や仕事、はじめての恋を経験し、やがてレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていき…。
おすすめポイント
はじめて故郷を離れて英雄の父と旅に出た少女ユリアは、呪われた地レーエンデで元傭兵の射手トリスタンと出会い、穏やかな日々を過ごす。しかし、やがてレーエンデの呪いが、3人の運命を翻弄していく。
人には抗うことのできない災いを前にして、なにを選び、なにを犠牲にするのか。苦悩と葛藤に苛まれながらも、彼らの選択する道から目が離せなくなる王道ファンタジー。
『この夏の星を見る』辻村深月
あらすじ
茨城の県立高校の二年生である亜紗は、コロナ禍により楽しみにしていた天文部の合宿もなくなり、部活動や学校行事などが次々に制限されていく。
そんな中で、オンライン会議を駆使することで、全国で繋がっていく天文部の中高生たち。自作した望遠鏡で星を観測する「スターキャッチコンテスト」開催の次に彼らが狙うのは…。
おすすめポイント
コロナ禍による鬱屈した中で、自作の望遠鏡を用いて制限内にみつけた星の数を競う「スターキャッチコンテスト」の開催に向けて、奔走していく天文部の中高生たち。
鬱々とした日々の中で、それぞれが悩みを抱えつつも、自分たちで夢中になれるものを見出していく姿に、救いと希望を感じさせてくれる青春小説。
『地雷グリコ』青崎有吾
あらすじ
勝負事にやたらと強い、女子高生の射守矢真兎(いもりや・まと)。平穏を望んでいる彼女が日常のなかで巻き込まれる、ちょっと変わったゲームの数々。
次々と強者を打ち破っていく勝負の先に待ち受けるものとは…。
おすすめポイント
グリコや神経衰弱、だるまさんがころんだなど、誰もが知っている遊びにアレンジを加えることで、刺激的でハラハラする頭脳バトルへと変貌する。
読者も一緒になってどうすれば勝てるのか、ルールの穴はどこにあるのかを考えつつ、勝負の行方をワクワクしながら見守ってしまう。ヒリつく心理戦や、ゾクゾクさせられる騙し合いから目が離せなくなる頭脳バトル小説。
【ミステリー】おすすめ小説
1位『屍人荘の殺人』今村昌弘
あらすじ
神紅大学ミステリ愛好会の一員である葉村譲と会長の明智恭介は、同じ大学の「探偵少女」である剣崎比留子に誘われて、いわくつきの映画研究部の夏合宿に参加することに。
合宿初日の夜に、きもだめしをしようと映研のメンバーたちで出かけるのだが、予想だにしない事態に巻き込まれ「紫湛荘」に立てこもらざるを得ない状況になった。翌朝になり、密室で変わりはてた姿でメンバーの1人が見つかり…。
おすすめポイント
本作は、紫湛荘にあることで閉じ込められるクローズド・サークルものなのだが、その設定があまりに斬新で読者を惹きつける。また、紫湛荘のなかで繰り広げられる連続殺人には、緊迫さがこちらまで伝わり目が離せない。
大胆な密室ものの設定と緻密なトリックが融合し、謎解きの楽しさを存分に味わえる物語。
2位『容疑者Xの献身』東野圭吾
あらすじ
高校教師である石神は、天才数学者でありながら不遇な生活をおくっていた。娘の美里と2人で暮らす隣人の花岡靖子に秘かな想いを寄せていた。あるとき、前夫である富樫が居場所を特定して訪ねてくるのであった。金を無心し、暴力をふるう富樫に耐えかねて、靖子と美里は殺してしまう。2人の状況を察した石神は、救うために完全犯罪を企てる。しかし、石神と大学時代の親友でもある、天才物理学者の湯川学が、捜査に加わり真相に近づいていくのだが…。
おすすめポイント
天才vs天才の攻防に目が離せないだけでなく、湯浅の親友を思いやり苦悩する姿も見どころである。湯浅が天才と認めた男が企てた完全犯罪、そこに隠された切なくも驚くべき真実に、あふれでる感情を抑えきれない。
3位『すべてがFになる』森博嗣
あらすじ
孤島の研究所で、幼少期から隔離された暮らしをおくる天才プログラマーの女性である真賀田四季。彼女の部屋からウエディングドレスを着飾った、両手両足を切断された死体が発見された。
たまたま、島をおとずれていたN大助教授の犀川創平と女子学生の西之園萌絵が、この謎に満ちた密室殺人に挑んでいく。
おすすめポイント
孤島のハイテク研究所でおこった密室殺人。手の込んだトリックもさることながら、天才である真賀田四季の存在感が大きく、天才ならではの思考や価値観に魅力を感じてしまう。また、刊行が20年前だというのに、VR技術を的確に捉えている部分も興味をそそられる。
理系の知識と思考を試される、トリックを存分に堪能することのできる理系ミステリー作品。
4位『満願』米澤穂信
あらすじ
人を殺めた女は、控訴を取り下げて刑が確定した。静かに刑期を終えるが…。(「満願」)失踪した恋人のもとを訪れ、信頼を取り戻そうと奔走するのだが…。(「死人宿」)ビジネスマンが直面する最悪の交渉条件に緊迫する。(「万灯」)切実に生きる人びとが遭遇する奇妙な6つの事件。表題作を含む短編集。
おすすめポイント
それぞれにティストの違う独立した6つの話に、人間の内に秘めた狂気や執念を描いている。それらは、じわじわと忍び寄る不気味さをあたえつつも、深い余韻と心のざわつきを読者に残していく。
人生を狂わされた者たちの事件に潜んでいる動機に、ダークさと後味の悪さがクセになる作品集。
5位『ホワイトラビット』伊坂幸太郎
あらすじ
指定された人間を誘拐してくる仕事をしている兎田考則。そんな男の新妻である綿子が誘拐グループにさらわれてしまう。無事に返してほしければ、誘拐グループのコンサルトをしているオリオオリオを連れてこい、と条件を突きつけられる。兎田は懸命に探し回り、やがて一件の家に辿り着く。その家には訳ありの人たちが集まり、いつの間にか籠城事件へと発展していくのだが…。
おすすめポイント
登場人物がそれぞれに問題を抱えており、選択に悩みながらも現状を打開していこうとする姿には、ハラハラとドキドキが止まらない。著者の巧みな時間軸の構成に、混乱と戸惑いをいだきながらも、物語に魅入られてしまう。
6位『告白』湊かなえ
あらすじ
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」中学校の1年B組。終業式の日に担任である森口悠子は、教師を辞めることを生徒たちに告げた。その原因とされる、娘がプールに転落して亡くなったことについて語りだす。犯人である「A」と「B」をあげながら、すでに彼らには復讐を仕掛けた、と宣告して去っていく…。
おすすめポイント
大切なものを失った哀しみと憤りは、きれいごとだけでは語れない。それは、教師という立場にあっても同じである。さらけだされた、人の心の奥底を覗き見すれば、嫌悪感を抱くかもしれないが、それが人なのだと感じさせ、物語に引き寄せられてしまう。事件の関係者たちの独白に、人間としての本性が透けて見え、それが読者に深い余韻を残していく作品。
7位『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉
あらすじ
国立署の新人刑事である宝生麗子。その正体は、世界的にも有名な「宝生グループ」のお嬢様だが、職場では秘密にしている。職場では、パンツスーツに黒縁メガネという地味な着こなしながら、大豪邸に戻ればドレスに着替えて優雅にディナーを楽しむ麗子。難事件により捜査が進まなくなると、執事の影山にいつも相談しては、「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」と毒を吐かれながらも、事件の謎を解き明かしていく。
おすすめポイント
お嬢様の麗子と毒舌の影山ふたりの、痛快でいてユーモアたっぷりの掛け合いが、本作の最大の魅力になっている。またそこに、おぼっちゃんの風祭警部がスパイスを加えて、ライトミステリーを堪能することができる。
お嬢様刑事と暴言を吐く執事の軽快な会話をたのしみながらも、謎解きの爽快感を味わえる作品集。
【どんでん返しミステリー】おすすめ小説
1位『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼
あらすじ
香月史郎は、推理作家でありながら難事件を解決してきた。そんな彼が、ひょんなことから霊媒師の女性である城塚翡翠に出会い、ともに事件を解決することに。彼女は、霊媒によって死者の言葉を伝えることができる。だが、そこに証拠能力はないため、香月が霊視をもとに論理の力で事件を解決に導かねばいけない。
そのころ世の中では、連続殺人鬼が人びとを脅かしていた。姿を見せず証拠を残さない犯人を追い詰めるには、翡翠の霊媒が不可欠。しかし、殺人鬼の影がひそかに彼女のすぐそばまで迫っていた…。
おすすめポイント
霊媒師と推理作家という異色のコンビが事件解決に乗り出していく。それと並行するように語られていく、姿なき連続殺人鬼の存在が少しずつ大きくなり、緊迫感を高めていくとともに、やがて訪れる著者の仕掛けに読者は唸らされる。
どこに違和感をいだくのか、推理すべきは何なのか。頭をフル回転しなければ、謎すら見えてこない。「すべてが、伏線。」という、著者からの挑戦状がここに。
2位『十角館の殺人』綾辻行人
あらすじ
無人島である孤島の角島。その島に建つ十角形をした奇妙な館の「十角館」に、大学のミステリー研究会のメンバー男女7人がおとずれた。この島では、半年前に四重殺人事件がおきており、館を建てた建築家の中村青司を含む4人が亡くなった曰くつきの場所でもある。
そんな島での1週間を満喫するはずの彼らは、やがて連続殺人事件に巻き込まれていく…。
おすすめポイント
春休みを満喫するためおとずれた孤島でおこる連続殺人。動機やトリック、構成にとミステリーの魅力がすべて詰まった、日本ミステリー界でもっとも有名な一冊。
時代が変わっても読み継がれる、この壮大な仕掛けに誰もが衝撃を味わうことのできる作品。
3位『殺戮にいたる病』我孫子武丸
あらすじ
東京の繁華街でつぎつぎと猟奇的な殺人を繰り返していた蒲生稔が逮捕された。通報したのは、独自の調査を進めていた元警察官の樋口。その逮捕現場には、息子が犯人なのではと疑っていた、母親の雅子の姿もあった。
そして物語は、これまで蒲生稔がおこなってきた残忍な犯行があかされていくのだが…。
おすすめポイント
街でくり返される猟奇的殺人事件。冒頭の犯人逮捕のシーンからはじまり、犯人、元刑事、犯人の家族、という3つの視点から事件をさかのぼって語られていく。グロテスクな描写も多いが、ぐいぐい読者を引き込んでいき、驚きの展開にしばし言葉を失う。
シリアルキラーの男がこれまで歩んできた軌跡に、恐ろしさとともに衝撃を受ける物語。
4位『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午
あらすじ
元私立探偵である成瀬将虎は、いつも利用しているフィットネスクラブに通う久高愛子から、身内が巻き込まれた悪質な保険金詐欺について証拠を掴んでほしいと依頼された。
同じころ、将虎は地下鉄に飛び込もうとしていた麻宮さくらを助け、それをきっかけにデートを何度かする仲になっていく。やがて、保険金詐欺と将虎の恋の2つのできごとが交わり…。
おすすめポイント
「何でもやってやろう屋」を称している成瀬将虎が、依頼を受けた保険金詐欺の調査に奔走していく。軽快に進んでいくストーリーに気を取られていると、みごとに足元をすくわれ、ハッとさせられてしまう。
予想だにしない展開に、爽やかに騙されながらも、タイトルに込められた想いに馳せてしまう作品。
5位『ハサミ男』殊能将之
あらすじ
2003年の東京。ちまたでは、女子高生の喉にハサミを突き立てられる連続猟奇殺人事件が発生していた。マスコミは犯人を「ハサミ男」と呼び、世間の注目を集めていた。
一方で、ハサミ男は3人目のターゲットを決め、入念な調査をおこなっていた。だが、自分の手口を真似た死体を発見した。ハサミ男は、誰がこんな殺害をおこなったのか調査を開始しはじめるのだが…。
おすすめポイント
遺体の首にハサミを突き立てる残忍で猟奇的な殺人事件。しかし、模倣犯があらわれ、殺人鬼であるハサミ男が真犯人を探すという特殊な設定ながら、緻密に計算された仕掛けに読者はしてやられる。
隠された仕掛けに、騙される快感を愉しむことのできる、上質なミステリー。
6位『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎
あらすじ
大学入学のため引っ越ししてきた椎名は、隣人である河崎に「一緒に本屋を襲わないか」と突拍子もないことを持ちかけられる。無論そんな話に乗る気はなかったのだが、なぜか椎名はモデルガン片手に書店の裏口に立ってしまう。その後ペットショップ店長の麗子から2年前のできごとが語られる…。
おすすめポイント
2年前の事件と現在のできごとが重なりあったとき、本屋襲撃の裏にある真相が浮かびあがり読者に衝撃を与えてくる。読後にタイトルの意味になるほどと納得。ほろ苦さと哀愁が心に響きわたる青春ミステリー。
7位『カラスの親指』道尾秀介
あらすじ
人生のどん底へと落ち、詐欺を生業としている中年男の武沢とテツ。ある日、ひとりの少女を助けたことで一緒に住むことに。さらには、同居人が増えていき、5人と1匹の奇妙な共同生活がはじまった。
やがて、彼らは悲しい過去と訣別するため、また失くしたものを取り戻すために、大計画を企てていくのだが…。
おすすめポイント
辛い過去を背負いし者たち5人が、一世一代の大勝負に打ってでる。息もつかせぬ展開にハラハラさせられつつ、壮大な騙し合いに目が離せなくなっていく。
過去に囚われながらも、必死にあがき前に進んでいこうとする姿に、清々しい読後感を味わえる物語。
【ホラー】おすすめ小説
1位『ぼぎわんが、来る』澤村伊智
あらすじ
幸せな新婚生活をおくっていた田原秀樹。あるとき彼の会社に、とある来訪者があった。それをきっかけに、秀樹の周りで超常現象というほかない怪異なできごとが頻発していた。
怪異から愛する家族を守るため、伝手をたどり比嘉真琴という女性霊媒師をたよることになった秀樹。はたして、迫り来るとてつもなく凶暴な存在から逃れられるのだろうか…。
おすすめポイント
イクメンである田原秀樹の「訪問者」、秀樹の妻である香奈の「所有者」、オカルト・ライターである野崎の「部外者」の3つの章で構成される本作。得体の知れないものが近づいてくる恐怖と緊迫感に、不安を掻きたてられ目が離せなくなっていく。また、視点が変わることで浮かび上がる人間の闇も見どころの一つとなっている。
日常が脅かされる怪異に、恐ろしさと不気味さを堪能しつくすことのできる物語。
2位『黒い家』貴志祐介
あらすじ
生命保険会社の京都支社で、保険金の支払い査定をおこなっている若槻慎二。あるとき、顧客の家に呼ばれ訪問した先で、子どもが首を吊った状態で亡くなっているのを発見してしまう。
ほどなくして、死亡死亡保険金が請求されたのだが、顧客の態度に不信感をつのらせた若槻は、独自の調査に乗り出していく。しかし、それが悪夢のはじまりになろうとは思ってもいなかった…。
おすすめポイント
保険金をめぐり描かれる人間の怖さ。欲望のためなら手段は選ばずに、躊躇なく実行する人間の恐ろしさがヒシヒシと伝わってくる。また、ひょっとしたら自分の身にこんなトラブルがおきるのでは、と思わせる恐怖感もある。
元保険会社に勤務していた著者ならではの、迫りくる人間の恐さを強烈なまでに心に刻み込まれる作品。
3位『首無の如き祟るもの』三津田信三
あらすじ
奥多摩にある媛首村。そこは、かつて首を斬られて亡くなった女の怨霊である淡首様の伝承が残る地でもある。そんな村の秘守家には、13歳になると「十三夜参り」という儀式があった。
その儀式のさなか惨劇ははじまり、さらには10年後にも悲劇がおきていき…。
おすすめポイント
媛首村でおきた2つの未解決事件。巧妙に練りあげられた構成、密室の謎にトリックや叙述にと、仕掛けがふんだんにあり、読者はそれに振り回されながらも存分に楽しめる。また、怪異なその雰囲気もまた本作を盛り上げている。
怪異とミステリーの融合された世界観を堪能しながらも、謎解きを存分に味わうことのできる「刀城言耶」シリーズ第3作目の傑作。
4位『火のないところに煙は』芦沢央
あらすじ
「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」。そんな依頼に作家である「私」は、8年前の凄惨な体験を思い出す。
結婚を考えていた恋人の男性とともに、当たると評判の「神楽坂の母」という占い師をたずねた角田尚子。だが、結婚は不幸になると告げられ、ふたりの関係はギクシャクしていき、ある悲劇が。ある日、仕事でたずさわった交通広告のポスターに奇妙なシミが見つかり…。(「染み」)
おすすめポイント
フィクションをドキュメンタリーのように描かれた本作。あたかも実話かな、と思わせるようなリアルな話に恐怖を覚えつつも、読み進めた先におとずれる仕掛けに背筋が凍りつく。
リアリティのある一つ一つの話に慄きながら、じわじわ迫りくる恐怖にゾッとさせられる。
5位『夜市』恒川光太郎
あらすじ
不思議な市場「夜市」では、妖怪たちがさまざまな品物を売っている。そこでは望むものは、なんでも手に入れることができる。幼いころ迷い込んだ夜市にて祐司は、弟と引き換えにして「野球の才能」を手に入れていた。エースとして野球部で活躍するまでに成長した裕司だが、たえず罪悪感に苛まれていた。
再びこの夜市をおとずれた今夜、弟を買い戻すため裕司は、強い意志のもと足を踏み入れていく…。
おすすめポイント
対価と引き換えに、ありとあらゆる物が手に入る「夜市」。日常からふと迷い込んだ別世界は、妖しくも興味をそそられるもので溢れている。それは、誰しもが子どもの頃におとずれた夏祭りのような懐かしさを抱かせ、読み手もいつの間にかその世界観に引き込まれていく。
幻想的でいて美しくも切なくもある雰囲気に、心惹かれ異界にいざなわれてしまう物語。
6位『リカ』五十嵐貴久
あらすじ
印刷会社に勤める本間隆雄は、家族を愛する42歳の平凡なサラリーマン。軽いノリではじめた「出会い系サイト」で、ひとりの女性と知り合った。「リカ」と名乗る彼女とやり取りをしていたが、次第に常軌を逸した行動が目立ちだしたため、本間は携帯の番号を変えて連絡を断つことに。
しかし、リカの執拗なまでのストーキングに追い詰められていく。周囲の者にまで被害がおよび、本間はリカとの対決を決意するのだが…。
おすすめポイント
異常なまでの手段で追ってくる女性リカ。何をしでかすか分からない彼女が、じわじわ迫りくる不気味さにハラハラさせられる。そんな、現実でもおこりそうなストーカーの恐ろしさが、恐怖感を増幅させていく。
狂気に満ちた1人の女性が、徐々に忍び寄ってくる恐怖に戦慄を覚える作品。
7位『リング』鈴木光司
あらすじ
苦悶の表情とともに4人の少年少女たちが、同日の同時刻に亡くなった。姪の死を不審に感じた雑誌記者の浅川は、怪死の真相を調査しはじめた。そして手にしたひとつのビデオテープ。
彼らは、このビデオテープを見た1週間後に死亡している。恐怖と期待が入り交じるなか浅川は、デッキに震える手でビデオテープを差し込んだ。画面に光があらわれ、静かに再生がはじまり…。
おすすめポイント
そのビデオを見たものは1週間後に死ぬという呪いのビデオ。呪いを解くため探っていくミステリー要素に加えて、にじり寄るようなスリルと恐怖に、興味をそそられ目が離せなくなってしまう。
忌まわしいビデオをめぐる謎解きと、迫りくるタイムリミットに、恐怖心を煽られるホラーを堪能できる作品。
【ファンタジー】おすすめ小説
1位『月の影 影の海 十二国記』小野不由美
あらすじ
それまで普通の女子高生であった陽子。ある日、彼女の前に「ケイキ」と名乗る異様な出で立ちをした男があらわれ、見知らぬ異界へと送られた。
ケイキたちとはぐれ陽子は、異形の獣には襲われたり、出会うものに裏切られながらも、さまよい続けていく。なぜ異邦へ迎えられたのか、そして戦わなければいけないのか…。
おすすめポイント
突如として異世界へと導かれた女子高生の陽子。彼女がおとずれる土地で、孤独や苦難に苛まれながらも成長していき、力強く生き抜いていく姿に、前に進む勇気をわけてもらえる。
見知らぬ異世界に飛ばされ、つらい現実と向き合いつつも生き抜こうと歩みをやめない陽子に、心を奪われてしまう作品。
2位『精霊の守り人』上橋菜穂子
あらすじ
短槍使いである30歳の女用心棒バルサ。彼女は、新ヨゴ皇国の第2王子であるチャグムを母の二ノ妃から託された。チャグムには水の魔物が憑いており、それを疎ましく思った父帝に命を狙われているという。
王宮から追ってくる刺客や、王子に宿る卵を狙おうとする異界の魔物らと死闘を繰り広げ、バルサはチャグムを守りながら、逃亡をしていくのだが…。
おすすめポイント
精霊の卵を宿した皇子チャグムの護衛を任された女用心棒バルサ。幼いころバルサ自身も命を狙われた経験があり、父の親友で短槍使いのジグロに救われた過去があった。それらをチャグムの歩んでいる人生に自らを重ねていく姿は、いとおしさと切なさがある。
精霊の卵をめぐる理不尽な闘いに巻き込まれながらも、道を切り開いていくバルサたちに、胸の高鳴りを感じずにはいられない物語。
3位『烏に単は似合わない』阿部智里
あらすじ
人間の姿に変身することのできる八咫烏の一族が支配する「山内」。今まさに、世継ぎである若宮の后選びがはじまろうとしていた。朝廷で激しい権力争いをする四家の貴族から遣わされた4人の姫君。
春夏秋冬を司るかのようにそれぞれに魅力を誇る姫君たち4人が、思惑を胸に秘めて后の座を競うなか、さまざまな事件がおこっていき…。
おすすめポイント
若宮の后選びをめぐり立場も性格もまったく違う、4人の姫君たちが競い合う。それぞれの思惑が絡み合うなか、嫉妬と憎悪にみちた愛憎劇が繰り広げられる。しかし、予想だにしない展開を迎え、いい意味で期待を裏切られる。
世継ぎの后選びをめぐり火花を散らす姫君たちに、迫りくる謎の数々に魅入られていく物語。
4位『熱帯』森見登美彦
あらすじ
汝にかかわりなきことを語るなかれ――。という警句からはじまる謎めいた1冊の本『熱帯』。若かりしころ、手にして読了を前に忽然と消えてしまった不思議な本を探し求める作家の森見登美彦氏。
ある日、「沈黙読書会」なる催しで本のことを知る女性と出会った。彼女は、「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」と告げるが、その真意はわからない。幻の本をめぐる旅は、東京の片隅から京都を駆け抜け、やがて冒険は大海原へと続いていく…。
おすすめポイント
最後まで読んだ者はいない奇妙な本をめぐる冒険譚。物語のなかに物語が広がる入れ子構造に、一度そこに迷い込んだら物語に囚われて抜け出せない。そんな現実と幻想の世界をさまようような不思議な体験をさせられ、本を読む愉しさを存分に味わえる。
誰もラストを知らない謎めいた奇書をめぐる冒険に、今までにない読書体験を味わうことのできる物語。
5位『火狩りの王 春ノ火』日向理恵子
あらすじ
人類最終戦争後の世界。大地は黒い森に覆いつくされ、結界に守られた土地にて細々と暮らしていた。人びとは、そばで自然の火が燃えると、自分も内側から発火してしまう、「人体発火病原体」に悩まされていた。
この世界で人が安全に使用できる火は、森に棲む炎魔から採れるものだけだ。そんな火を手に入れることを生業とする火狩りたちに、ある噂が密かにささやかれていた…。
おすすめポイント
火を使うことに重い制約がついてしまった世界。災いにより過酷な運命をしいられながらも、それらを乗り越えようと奔走する少年少女たちに、困難に抗う力を与えてくれる。
謎多きその世界観に惹きつけられ、非力な子どもたちが駆け巡る姿に目が離せなくなり、物語にどっぷり引き込まれていく。
6位『指輪物語 旅の仲間』J・R・R・トールキン
あらすじ
はるか昔、冥王サウロンがつくりし闇の力を秘めた恐ろしい指輪。思いがけず指輪を手にしたホビット族のフロドは、魔法使いのガンダルフより指輪の正体を告げられた。このままでは、故郷が危険に晒されるとの思いから、彼は仲間とともにホビット庄をあとにした。
そして、はてしない冒険が幕をあげる。幾多の出会いと別れ、友情に裏切りを繰り返していく。一体、その先になにが待ちうけているのか…。
おすすめポイント
映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作である『指輪物語』。ホビットにエルフ、ドワーフ、魔法使い、エルフなど多彩な種族に魅せられながら、世界を滅ぼす魔力を秘めた「ひとつの指輪」をめぐり繰り広げられる仲間たちとの壮大な旅に引き込まれていく。
闇の力を秘める黄金の指輪をめぐり、集まりし仲間たちとの大冒険に、心を奪われてしまう作品。
7位『モモ』ミヒャエル・エンデ
あらすじ
町はずれにある廃墟の円形劇場に住み着いた少女モモ。彼女に話を聞いてもらうと、幸せな気持ちになれるという不思議な力を持っていた。周りの人びとは、なにかあるとモモに相談することで、心穏やかな日々を過ごしていた。
しかし、そこへ「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ってきて、人びとの生活は少しずつおかしくなってしまい…。
おすすめポイント
時間どろぼうの灰色の男にそそのかされ、盗まれた時間を取り返そうと奔走する少女モモ。ムダな時間をなくすことで、慌ただしく働くことで経済的には裕福になるが、心に余裕がなくなっていく。つねに効率が求められる現代社会において、時間をどのように扱うのかを深く考えさせられる。
灰色の男たちとモモの攻防を通して、現代人が忘れがちな時間の大切さをあらためさせ、心に深く響くるものがある物語。
【青春】おすすめ小説
1位『君の膵臓をたべたい』住野よる
あらすじ
高校生の僕は、病院でたまたま拾った「共病文庫」なる文庫本。それは、クラスメイトである山内桜良が綴っていた秘密の日記帳であった。なかには、彼女が肝臓の病気であり、余命いくばくもないことが記されていて…。
「名前のない僕」と「日常のない彼女」のふたりが紡ぐ、青春小説。
おすすめポイント
日記を拾ったことで、接点のなかった2人が関わりだし主人公の僕は、桜良に振り回されてしまう。病気であるはずなのに、無邪気に駆けまわる日々を過ごす桜良についつい余命が残り少ないことを忘れる。
しかし、着実に迫ってくるそのときが、切なくもあり、現実の非情さが深く心に刻まれるとともに、生きることの大切さを伝えているようでもある。
性格のまったく正反対の2人が出会い、迫りくるそのときまで今を謳歌して生きていく姿に、胸をふるわせる物語。
2位『蜜蜂と遠雷』恩田陸
あらすじ
若いピアニストたちの登竜門として世界的にも注目される芳ヶ江国際ピアノコンクール。
養蜂を生業とする父と移動生活をし、自宅にピアノを持たない16歳の少年・風間塵。かつて天才少女といわれたが母の死を境に、ピアノから離れていた20歳の栄伝亜夜。楽器店に勤務するサラリーマンで妻子持ちである、28歳の高島明石。完璧なまでの演奏技術と音楽性を兼ね備えて、優勝候補とされる19歳のマサル。
若き才能たちによる、熱き闘いの幕が上がる…。
おすすめポイント
ピアノコンクールに懸ける、それぞれが抱えている想いや葛藤に引き寄せられ感情移入させられる。また、本作の魅力の一つとなっている演奏シーン。文字として描かれているのに、ピアノが奏でる音をまるで読者もホールで聴いているかのごとく興奮させられる。
国際ピアノコンクールに挑んでいく、若き才能のピアニスト4人たちの姿に、音楽の世界にいざなわれ心を揺さぶられる物語。
3位『線は、僕を描く』砥上裕將
あらすじ
2年前に両親を交通事故で亡くし、自分のカラに閉じこもってしまった大学生の青山霜介。絵画展示の搬入作業のバイト先で、日本を代表する芸術家の篠田湖山と出会い、どういうわけか気に入られ内弟子にされてしまう。湖山の孫の千瑛は、それに反発し、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負するという。
霜介は、はじめての水墨画に戸惑いつつも、線を描くことで、人と自然との繋がり、生きることの意味を見いだしていく…。
おすすめポイント
喪失のなか将来に希望を見いだせず淡々とした日々を過ごしていた青山霜介。哀しみと孤独の中でもがいている主人公が、「水墨画」をとおして人びとに触れ、線を描くことに魅せられていく。閉ざしていた自身の内側の世界から、外の世界に飛び立とうとする姿には大きく心を揺さぶられる。
孤独にあった青年が、水墨画の線を描くことに魅せられ、自らの人生を再生していく姿は、美しくも心を癒される物語。
4位『砂漠』伊坂幸太郎
あらすじ
入学した大学で知りあった5人の男女。何事にもさめた北村、軽薄で女好きの鳥井、不思議な力が使える南、大学一の美人の東堂、まっすぐで熱い西嶋。麻雀に合コンに明け暮れ、犯罪者だって追いかける。己の未熟さに苦悩し、それでも、なにかを求めて手探りで前へ進もうとする青春物語。
おすすめポイント
魅力にあふれた登場人物が、二度と振り返ることのできない時間を、全力で爽快に駆け抜けていく。「社会」という名の砂漠に打ち勝つ、大切なモノを贈ってくれる群像劇。
5位『小説の神様』相沢沙呼
あらすじ
学生で作家デビューしたが、作品は酷評されて売り上げも振るわずにいる高校生の千谷一也。そんなとき、編集者の提案により人気作家との小説の共作をすることに。
その人気作家とは、同じ学校に転校してきた小余綾詩凪であった。まったく正反対のふたりが反発しあいながらも物語を紡いでいくうちに、一也は詩凪が抱える大きな秘密を知ることになるが…。
おすすめポイント
作品が売れずに自分を見失いつつある千谷一也。一方で、人気作家として注目され、クラスでも人気者の小余綾詩凪。そんな一也と詩凪のふたりが、壁にぶつかり思い悩みながらも、物語を綴ることに情熱を傾けていく姿に魅せられてしまう。
作家の厳しい現状を生々しく語りながら、「どうして小説を書くのか」という問いに真摯に向き合いつつ、前に進んでいこうとする2人に、胸を熱くさせる物語。
6位『風が強く吹いている』三浦しをん
あらすじ
逃げるように夜道を駆け抜けていく蔵原走。そんな彼の前に、見知らぬ男が声をかけてきた。「走るのは好きか」と…。男は清瀬灰二と名乗り、竹青荘という古びた学生寮に導かれた。
竹青荘には、特異な才能をもつ住人たちが暮らしていた。そして、まさか蔵原を含めた10名で、「箱根」に挑むことになろうとは夢にも思ってもいなかった…。
おすすめポイント
学生寮の竹青荘ことアオタケの住人たち10人で目指すことになった箱根駅伝。ヘビースモーカーの「ニコチャン」、司法試験に合格した秀才の「ユキ」、クイズ番組好きの「キング」、田舎育ちの「神童」、にと個性あふれるメンバーを、灰二が手を変え品を変えてみんなを導いていく。自分の弱さを認め、仲間を信じて、「速さ」ではなく「強さ」を追い求めていく彼らに、胸を熱くさせられる。
10人の才能豊かなものたちが、壁にぶつかり限界に挑みながら成長していく姿は、眩しくも羨ましくもあり読み手の心を掴んではなさない。
7位『カラフル』森絵都
あらすじ
生前のあやまちにより、輪廻のサイクルから外れたぼくの魂。しかし、天使業界の抽選にあたり、もう一度チャンスをもらった。そして、ぼくは「小林真」という中学3年生の体にホームステイし、前世での悪事を思い出さなければいけなくなった。
ところが、ガイド役の天使からは、父親は自己中なヤツで母親は不倫中だと告げられる。気乗りしないホームステイであったが、よくよく周りを見渡してみれば、世の中そんなに単純じゃないことに気づいていき…。
おすすめポイント
再挑戦のチャンスを手にし、前世の罪を思い出さなければいけなくなった「ぼく」。生きていれば誰しも、あやまちを犯すことはある。とくに悩んで追い詰められたり、自分の世界にこもってしまうと、周りが見えなくなってしまう。
しかし本作では、人それぞれに個性があり決して1色ではなく、この世はもっと鮮やかに彩られていると、大切なことを教えてくれる。
いい加減な天使により与えられたチャンスに、今まで見えていなかったことに気づかされ、生きづらさを感じていた景色がまったく違ったことに心を救われる作品。
【恋愛】おすすめ小説
1位『阪急電車』有川浩
あらすじ
宝塚から西宮北口間をわずか15分で走り抜けるローカル線である阪急今津線。その電車に、それぞれの愛や想いを密かに抱えながら、たまたま乗り合わせた人びとがいた。
乗客それぞれの人生がそっと交錯し、それがやがて小さな奇跡を紡いでいく。前に一歩踏み出せば、そこにはいつもと違う景色が待っている。
おすすめポイント
片道15分という短い8つの駅の阪急今津線に、居合わせた人びとを各駅ごとに描いた本作。たまたま、その電車に乗り合わせた人びとが影響しあいながら、それぞれの人生に変化をもたらせる。電車という限られた空間で、交わされる会話から普段とは違う景色を見せられ、読者の心をほっこりさせてくれる。
えんじ色の電車に乗り合わせた乗客たちが、ふとした偶然が重なり紡がれていく愛の数々に、ほのぼのさせられる物語。
2位『桜のような僕の恋人』宇山佳佑
あらすじ
夏も終わりかけのある日の午後、美容室をおとずれたカメラマン見習いの晴人。そこで出会った美容師の美咲に一目惚れしてしまう。彼女目当てで、その店に通い詰めやがてふたりは恋人同士となる。
だが、幸せな時間は長くは続かず、美咲は普通のひとの何十倍もの早さで老いていく難病をわずらってしまう。自分が老いていく姿を晴人にだけは見せたくないと悩んだ美咲は、別れを告げるのだが…。
おすすめポイント
カメラマン見習いの晴人が美容師の美咲と出会い、やがて恋人同士となったふたり。ゆっくりと幸せを育んでいくふたりだったが、美咲が急速に老いていく難病を発症してしまう。突如として告げられた余命に混乱しながら決断を迫られる彼女には、辛いものがあるが同時に、今という時間を過ごすことの大切さに気づかされる。
恋人が不治の病になりながらも互いを思いやる気持ちには、切なくも心を揺さぶられる物語。
3位『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
あらすじ
大学の後輩である「黒髪の乙女」にひそかに片想いしている「先輩」。彼女を追い求めて、夜の先斗町や、下鴨神社の古本市、大学の学園祭にと、歩きまわる日々だが、彼女になかなか気づいてもらえない。
そんな2人を待ち受ける、奇妙な人びとがおこす珍事件へと巻き込まれてしまう。京都の夜を自由に渡り歩いていく黒髪の乙女に、先輩の恋は一体どこに向かっていくのか…。
おすすめポイント
「黒髪の乙女」こと大学の後輩に、恋心を抱いている「先輩」。偶然の出会いを装いつつ近づこうとする先輩だが、京都の町で繰り広げられる面白おかしな事件の数々に巻き込まれていく。ちょっと風変わりな面々と、コメディタッチの独特な世界観に魅了されてしまう。
自由奔放な女性である後輩に、振り回される先輩が愛おしくあり、その奇想天外なストーリーに惹かれてしまう作品。
4位『マチネの終わりに』平野啓一郎
あらすじ
若くして世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史。ある日、演奏会のあと国際ジャーナリストである小峰洋子と出会った。互いに惹かれあう蒔野と洋子であったが、洋子には婚約者がいた。
それぞれ人生を尊重するが故にままならない互いの関係。現実に向き合うなか、蒔野と洋子の想いは徐々にすれ違いが生じていく。そんな、ふたりに待ち受けている愛の結末とは…。
おすすめポイント
初めて出会ったときから強く惹かれ合うふたりだが、洋子には婚約者がいる。互いに想いを寄せながらも、ちょっとしたすれ違いにより交わることのないふたり。相手を尊重しながら揺れ動く心情には、もどかしくも深すぎる愛情を感じさせる。
40代に迫ったふたりが見せる、切なくも美しい大人の恋の行方が、心に染みわたる作品。
5位『傲慢と善良』辻村深月
あらすじ
それぞれ30代の西澤架と坂庭真実は、婚活アプリで知り合い、一緒に住んでおり結婚も決まっていた。互いに充実した日々を過ごしていると思っていた。しかしある夜、真実は突如として失踪するのだった。彼女の居場所を探すため架は、彼女が秘密にしていた過去とある真実を知ることになる…。
おすすめポイント
架と真実の2人は、謙虚で自己評価が高いわけではない。しかし、自己愛が強いがゆえに知らず知らずのうちに多くを相手に求めていた。それらの現実をつきつけられ、傲慢と善良について、読者の心を大きくえぐっていく。
恋愛や結婚への息苦しさを前に、もがきながらも自身の心と向き合っていく姿は、胸に刺さるものがある。
6位『いま、会いにゆきます』市川拓司
あらすじ
妻の澪に先立たれて1年、6歳になるひとり息子とひっそり暮らしている巧。梅雨の季節のとある雨の日、いつもどおりの散歩をしに出かけた森で、亡くなったはずの妻に出会う。
しかし、彼女は過去の記憶をおぼえていなかった。そんな彼女をやさしく迎え入れた巧たちは、3人でのちょっと不思議な共同生活をはじめるのだが…。
おすすめポイント
「雨の季節に戻ってくる」という言葉を残してなくなった妻。ある雨の日に、夫と息子の前にあらわれた彼女そっくりな人物に出会ったのだが。
ささやかな日常にある幸せが愛おしく描かれる。不器用でありながらも、ひたむきな愛に心を奪われてしまう。切なくもあるが、胸に沁みるものがある物語。
7位『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文
あらすじ
京都の美大に通っている南山高寿は、通学電車のなかで出会った福寿愛美に一目惚れした。高嶺の花と思える彼女に、勇気を振りしぼり声をかけるのだが、なぜか突然、涙を見せるのだった。困惑する高寿だが、彼女の涙の意味を知るよしもなかった。
やがて、ふたりは距離を縮めていき、交際がスタートする。しかし、愛美は想像もしていない重大な秘密を抱えていたのだった…。
おすすめポイント
愛美に一目惚れした高寿は、少しずつ愛を育んでいくのだが、彼女の言葉に見え隠れしてくる違和感。そんな、彼女が隠している秘密には胸を締め付けられ、思わず涙腺が緩んでしまう。
大切な人との日常に思いを馳せつつも、ふたりの切なすぎる運命に、心を震わせる物語。
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